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不整脈の早期発見と予防

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不整脈は、早期発見、早期診断、早期治療が重要となります。また、突然死の原因になることもある疾患で、日常生活における予防対策が欠かせません。薬剤師は服薬指導だけでなく、生活習慣においても相談やアドバイスをすることで、かかりつけ薬剤師としての役割を果たすことが大切です。

患者の脈をはかる医師

家庭でできる「検脈」の指導

薬剤師が患者さんの生活状況や気になる症状について聞き取りを行うと、不整脈の既往がある患者さん以外からも動悸やめまいなどの症状について相談されることがあります。とくに生活習慣病などがある不整脈発症リスクが高い患者さんに対しては薬剤師がその場で検脈の方法を説明し、日常的に行うよう指導します。検脈が不整脈の早期発見につながることがあります。検脈は、人差し指と中指、薬指の3本で橈骨動脈に触れて脈を検知する方法です(図1)。

図1 検脈の方法

(1)片側の手のひらを上に向ける
(2)反対の手の人差し指、中指、薬指の3本で橈骨動脈に触れる
(3)15秒間脈拍を測定する(4倍すると1分間の心拍数)

検脈の方法

検脈は日ごろから行うように指導しましょう。
脈の触れ方が規則的でない、あるいは脈拍が50回以下、もしくは100回以上の場合は医療機関の受診を勧めます。

また、抗凝固薬や催不整脈作用のある抗不整脈薬など処方されている患者さんに対しても服薬指導の一環として検脈の指導を取り入れ、患者さんのアドヒアランス向上に努めることが重要です。

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不整脈の予防

不整脈は加齢以外にも、ストレス、飲酒、喫煙などの生活習慣が原因で起こることがあります。また、生活習慣病は、心疾患のリスクとなります。不整脈のなかには心配しなくてよいものもありますが、突然死の原因になることもあるため、予防が重要となります(図2)。

図2 不整脈の予防に役立つ生活習慣

不整脈の予防に役立つ生活習慣

とくに生活習慣病や心血管疾患などの基礎疾患がある人は不整脈リスクが高いため、生活習慣の見直しと定期的な受診、継続的な服薬による疾患管理が重要です。

服薬管理と生活指導のポイント

薬剤師が患者さんの基礎疾患や病態をふまえて、なぜこの患者さんにはこの抗不整脈薬が処方されているのかを理解しておくことは服薬指導の質を向上させます。そのうえで、医師の薬の処方の目的や効果について患者さんや家族が十分理解できるように丁寧に説明します。患者さんの疾患理解が深まることで、服薬アドヒアランスも向上します。

●携帯型/着用型心電計を使った健康管理

2021年8月の薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の改正により、薬剤師には投薬後の患者さんのフォローアップが求められるようになりました。

薬剤師は、抗不整脈薬だけでなくその他の薬剤の催不整脈作用に注意し、服薬管理を行うことが重要です。近年は携帯型 / 着用型心電計を使って患者さんのフォローアップを行うなどの工夫も広がっています。スマートウォッチなどについた心拍センサーは診断には使えないものの、日常的な健康管理のツールとしての活用は、健康管理の意識づけにも役立ちます。

また、脈拍の乱れや動悸などの症状以外にも、「めまいがある」「息苦しく感じる」「階段の上り下りがつらく感じる」「疲れやすくなった」など、気になる症状やいつもと違うと感じることがないか、患者さんに確認し、医師や看護師などと情報共有することが重要です。

●服薬忘れを防ぐ工夫

抗凝固療法を受けている患者さんの場合、薬の飲み忘れが心原性脳梗塞のリスクを高めます。決まったタイミングで服用が習慣づけられるように、生活習慣を聞き取り、「食事が終わってソファで休む前に飲みましょう」「飲み忘れがないように、普段目にする場所にお薬カレンダーで管理しましょう」など、具体的な方法をアドバイスし、家族とも共有しておくことが大切です。

お薬カレンダーを使う家族

●心臓を守る生活を

日常生活では、心拍数や血圧の急激な変動を避けることが大切です。たとえば、寒い季節に居室からトイレや脱衣所に移動すると、急激な気温の変化で血圧が上昇します。トイレや脱衣所にも暖房を入れて温度差が大きくならないようにします。また、排便時の怒責(いきみ)も血圧上昇の原因になります。食事では食物繊維をしっかり摂ることを心がけ、便秘を防ぐことも心臓への負担を減らすことにつながります。

●睡眠

患者さんのなかには、不整脈の症状を自覚することで不安や不眠を訴える人がいます。睡眠が不足すると交感神経と副交感神経のバランスが乱れ、不整脈を起こすことがあります。

ストレスも不整脈の誘因となります。リラックスする時間をつくり、質の高い睡眠をとることの重要性を伝えます。過度の飲酒は不整脈のリスクになるだけでなく、睡眠の妨げにもなります。毎日の起床、就寝時間は変えないようにし、生活リズムを整えることが発作の予防につながることを指導します。また、不眠がある人や不安が強い場合には、医師に相談することを勧めます。

●運動習慣

ウオーキングなどの適度な運動の習慣をもつことは生活習慣病の予防や治療にもなり、睡眠の質も高めます。しかし、不整脈の患者さんは運動によって症状が強くなることもあるため、必ず医師に確認してから行うように伝えます。

●食事

不整脈予防に限定した食事などはありませんが、生活習慣病がある人や心血管疾患の基礎疾患がある人は、塩分や脂質を抑える、野菜や豆類、海藻類から食物繊維を摂る、栄養バランスの良い食事を心がけることが大切です。

●脱水の予防

脱水状態では血液の粘性をあげるため、水分はしっかり摂ることを心がけます。とくに高齢になるとトイレが近くなることを理由に水分を摂ることを消極的になる人がいるため、注意が必要です。

<文献>

日本循環器学会・日本不整脈心電学会合同ガイドライン:2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン
http://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/01/JCS2020_Ono.pdf
(2023年9月29日閲覧)
日本循環器学会・日本不整脈心電学会合同ガイドライン:2022年不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/JCS2022_Takase.pdf
(2023年9月29日閲覧)
杉薫監:これで安心!不整脈〜脳梗塞・突然死を防ぐ.高橋書店,2013.
古川哲史:違いがわかる 不整脈 抗不整脈薬・抗凝固薬を整理する 不整脈のこと,どれだけ知っていますか? 不整脈になりやすいのは誰?.レシピプラス,南山堂,19(3):19-22,2019.
黒川早矢香:特集 もうドキドキしない!薬剤師のための心電図と不整脈のはなし もうドキドキしない!不整脈の薬物治療Q&A①不整脈を増悪させないために気をつけたい生活習慣は?.薬局,南山堂,73(11):82-89,2022.

東邦大学大学院医学研究科循環器内科学 教授

池田 隆徳先生

1986年東邦大学医学部卒業。東邦大学医学部第三内科助手、米国シーダス・サイナイ医療センター&UCLA留学を経て、2002年杏林大学医学部第二内科講師に就任。同大学助教授(准教授)、教授を務めた後、2011年東邦大学大学院医学研究科循環器内科学、同医学部内科学講座循環器内科学分野教授に就任。翌2012年に同大学医療センター大森病院循環器センター長に就任。2024年に同大学医学部長・大学院医学研究科長に就任し、現在に至る。国際ホルターノンインベイシブ学会理事長、国際心電学会常務理事、日本循環器学会理事、日本不整脈心電学会理事、日本心血管協会理事長、日本心臓病学会代議員、日本内科学会評議員、日本心血管脳卒中学会役員などを務める。専門分野は循環器内科学(不整脈・心電学)。

この記事は2024年8月現在の情報となります。

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