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脂質異常症の原因

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血液中の脂質の値が基準値から外れた状態を脂質異常症といいます。高LDL(low density lipoprotein:低比重リポタンパク)コレステロール血症、高トリグリセライド血症、低HDL(high density lipoprotein:高比重リポタンパク)コレステロール血症があります。

肥満の男性

脂質とは

脂質はタンパク質、糖質(炭水化物)と並ぶ三大栄養素のひとつで、とくに身体を動かすエネルギー源となる栄養素です。ホルモンや細胞膜、核膜を構成するほか、臓器の保護や寒さから身体を守ったりする皮下脂肪としてのはたらき、脂溶性ビタミンの吸収促進などのはたらきもあります。

●脂質の種類

脂質は化学構造の違いによって、脂肪酸(fatty acid)、中性脂肪(neutral fat)、リン脂質(phospholipid)、コレステロール(cholesterol)などにわかれます(表1)。

表1 主な脂質の種類とはたらき
脂肪酸(fatty acid)
  • 脂質 を構成している主な成分で、中性脂肪が分解されて血液中に放出された遊離脂肪酸がエネルギーとして使われる
  • 身体の機能を正常に保つはたらきがある
  • リン脂質やコレステロールの一部にもなる
中性脂肪(neutral fat)
  • エネルギーとして使われる脂肪酸を運ぶ
  • 体内に蓄積されることで体温を保ったり、臓器を保護したりする
リン脂質(phospholipid)
  • 細胞の膜をつくる成分で、水と油脂の中間的な性質がある
コレステロール(cholesterol)
  • 細胞の膜をつくる成分
  • ステロイドホルモンの材料になる
  • 脂肪の消化や吸収を助ける胆汁酸の材料となる
  • 生活習慣病の原因となるコレステロールは、タンパク質と結合してリポタンパク質として血液中に溶け込んでいる

●脂質の合成と代謝

脂質の多くはトリグリセライドとして摂取され、膵液から分泌されるリパーゼの作用によって脂肪酸とグリセロールに分解されて小腸絨毛上皮細胞から吸収されます。吸収された脂肪酸とグリセロールはトリグリセライドとして再合成され、タンパク質が結合してリポタンパク質(カイロミクロン)となり、血液中に入って肝臓や脂肪細胞に蓄積されます。

脂肪細胞に蓄積されたトリグリセライドは、グリセロールと脂肪酸に加水分解されて脂肪酸はアルブミンと結合した状態で血液中に放出されます。血液中から肝臓や心臓、腎臓、筋肉、肺などに取り入れられることでエネルギー源として使われ、グリセロールは再びエネルギー産生やトリグリセライドの合成に使われます。

血液中のリポタンパク質は、脂質とタンパク質の割合によって種類が異なり、もっとも中性脂肪が多いものがカイロミクロン、中性脂肪を肝臓から筋肉、脂肪に運ぶVLDL(very low density lipoprotein:超低比重リポタンパク)、コレステロールが多く中性脂肪が少ないLDLコレステロール、タンパク質が多いHDLコレステロールにわかれます。

脂質異常症の分類

脂質異常症には、遺伝が原因で発症する原発性脂質異常症、生活習慣や薬剤、疾患が原因で起こる続発性(二次性)脂質異常症があります(図1)。原発性脂質異常症の占める割合はそれほど多くありません。

図1 脂質異常症の原因別分類

脂質異常症の原因別分類

続発性(二次性)脂質異常症の原因

続発性(二次性)脂質異常症は、疾患、薬剤の影響もその原因となりますが、多くは生活習慣によるものといわれています(図2)。

図2 脂質異常症になりやすい生活習慣

脂質異常症になりやすい生活習慣

●薬による脂質への影響

脂質に影響する薬剤には、次のようなものがあげられます(表2)。

表2 脂質に影響する主な薬剤

  • 高LDLコレステロール血症:利尿薬、β遮断薬、コルチコステロイド、経口避妊薬、シクロスポリンなど
  • 高トリグリセライド血症:利尿薬、非選択性β遮断薬、陰イオン交換樹脂、コルチコステロイド、経口避妊薬など
  • 低HDLコレステロール血症:タンパク同化ステロイド、β遮断薬、プロブコールなど

高血圧などの治療でβ遮断薬などを服用している患者さんは、脂質の検査数値に注意が必要です。数値の上昇がみられる場合には薬剤師から医師に薬剤の変更を提案するなどの対応が求められます。

<文献>

日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版.レタープレス,2023.
日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.レタープレス,2022.
https://www.j-athero.org/jp/wp-content/uploads/publications/pdf/GL2022_s/jas_gl2022_220713.pdf
(2023年11月27日閲覧)
厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会:日本人の食事摂取基準(2020年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書.
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
(2023年11月27日閲覧)
消費者庁:トランス脂肪酸に関する情報.トランス脂肪酸のファクトシート 資料2脂質と脂肪酸のはなし
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/trans_fatty_acid/pdf/100910_3.pdf
(2023年11月27日閲覧)
健康長寿ネット:三大栄養素の脂質の働きと1日の摂取量
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/shishitsu-shibousan.html
(2023年11月27日閲覧)
山田幸宏監:看護のためのからだの正常・異常ガイドブック.サイオ出版,2016.
仲村優子・及川眞一:特集 脂質異常症を理解する 脂質異常症の病態とメカニズム.20(5):576-582,2014.

地方独立行政法人
東京都健康長寿医療センター
センター長

秋下 雅弘先生

1985年東京大学医学部卒業。東京大学医学部老年病学教室助手、ハーバード大学研究員、杏林大学医学部助教授、東京大学大学院医学系研究科准教授などを経て、2013年同大学大学院医学系研究科老年病学教授。2024年4月東京都健康長寿医療センター・センター長に就任。専門は老年医学。日本老年医学会前理事長。日本老年薬学会代表理事、日本動脈硬化学会理事、日本サルコペニア・フレイル学会理事などを務める。日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』作成委員など。

この記事は2023年11月現在の情報となります。

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