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静脈血栓塞栓症とは

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静脈血栓塞栓症は、深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT )と肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism:PTE)を包括した総称です。欧米では発症頻度の高い循環器疾患のひとつですが、近年は日本でも生活の欧米化や高齢化、診断技術の進歩などにより、患者数が増加しています※1、2)

胸をおさえて苦しい様子の女性

静脈血栓塞栓症の病態

深部静脈血栓症は、下肢や骨盤内の深部静脈に血栓が形成された病態です。この血栓が遊離して肺に移行し、肺動脈を閉塞するのが肺血栓塞栓症です(図1)※1)。深部静脈で形成される血栓は、フィブリンの含有量が多いのが特徴です※3)

図1 静脈血栓塞栓症

静脈血栓塞栓症

深部静脈血栓症は、血栓が形成される位置によって、中枢型(近位型)、末梢型(遠位型、下腿型)にわけられます(図2)※2)

図2 深部静脈血栓症の分類※2)

深部静脈血栓症の分類

末梢型で下腿などに限局する血栓は小さいことが多く、症候性の肺血栓塞栓症が生じにくいとされています。一方、中枢型(近位型)は高い割合で肺血栓塞栓症を合併し、重篤化しやすくなります。

静脈血栓塞栓症の原因

静脈血栓塞栓症の原因として、血流停滞、血管内皮障害、血液凝固能亢進があげられます(図3)※2)

図3 静脈血栓塞栓症の主な原因※2)

静脈血栓塞栓症の主な原因

静脈血栓塞栓症の一部は、高ホモシステイン血症やアンチトロンビン欠乏症などの先天性因子が原因となりますが※2)、多くは後天性や原因不明(特発性)です。

静脈血栓塞栓症の症状

急性期の深部静脈血栓症は、血栓の形成に伴う浮腫や疼痛などの症状が出ることがあります※2)。慢性期には静脈還流障害による静脈瘤や色素沈着、皮膚炎などの血栓後症候群(post-thrombotic syndrome:PTS )がみられます※2)

急性肺血栓塞栓症は、急性右心負荷と低酸素血症による呼吸困難や胸痛などの自覚症状があります※2)

足が腫れている女性

<文献>

※1)  Nakamura M, Yamada N, Ito M,et al:Current management of venous thromboembolism in Japan: Current epidemiology and
advances in anticoagulant therapy. J Cardiol. 2015; 66(6): 451-459.
※2)  日本循環器学会/日本肺高血圧・肺循環学会合同ガイドライン:2025年改訂版肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2025/03/JCS2025_Tamura.pdf
(2025年4月1日閲覧)
※3)  吉田洋二:血栓の超微形態的構造.血栓症―発生・背景・治療,メジカルビュー社, 19-24,1989.

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中村 真潮先生

陽だまりの丘なかむら内科 院長

中村 真潮 先生

1988年三重大学医学部卒業。同大学内科学第一講座に入局後、上野総合市民病院、三重大学医学部附属病院、米国Baylor大学循環器内科勤務等を経て、1999年に遠山病院内科医長、2002年岩崎病院内科部長、2006年三重大学大学院循環器内科学助手、同大学大学院講師、同大学附属病院総合内科科長などを経て、2011年三重大学大学院臨床心血管病解析学講座教授に就任。2017年より現職。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医、日本高血圧学会高血圧専門医、日本動脈学会動脈硬化専門医、日本血栓止血学会血栓止血認定医。日本腫瘍循環器学会理事など。

この記事は2025年3月現在の情報となります。

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