ハイリスク薬の服薬管理と指導
Q.抗血栓薬の服薬指導では、どんなことに気をつければよいですか?
A.抗血栓薬服用中の患者さんに対する薬学的管理では、
・重大な出血と経過観察で様子を見てもよい出血を具体的かつ明確に伝える
・血圧を管理して脳出血を予防する
・DOACの減量基準の確認と至適投与量の評価
などがポイントになります。
抗血栓薬は、出血イベントに注意が必要な薬である一方、用量が少ないと血栓症リスクが上昇するなどの理由から、特定薬剤管理指導加算1の算定対象となる「特に安全管理が必要な医薬品」(ハイリスク薬)となっています。循環器領域で処方頻度が高いものとしては、抗血栓薬(抗血小板薬、抗凝固薬)、抗不整脈薬があげられます。そのなかで今回は抗血栓薬を例に服薬管理のポイントを解説します。
重大な出血と経過観察で様子を見てもよい出血を具体的かつ明確に伝える
抗血栓薬の服薬管理において重要となるのが、患者さんが受ける治療や病態に応じて適切な用量・用法で処方されているかどうかをチェックすることです。このときに基準となるのが出血リスクです。
たとえば、虚血性心疾患に対する冠動脈インターベンション(PCI)の治療後には、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)から始まり、その後抗血小板薬単独療法(SAPT)に移行します。この切り替えは出血リスクと血栓リスクを評価したうえで患者さんごとに決められるため、医師の指示を確認することが重要です。次回受診までの期間で、医師の指示通りにDAPT等の調剤が行われているかを確認します。
また、近年は患者さんの高齢化に伴い、抗凝固薬の服用が必要な心房細動合併例も増加しています。日本循環器学会の「2020年 JCSガイドラインフォーカスアップデート版 冠動脈疾患患者における抗血栓療法」に沿って、退院後の3剤併用(抗凝固薬+DAPT)から抗凝固薬+クロピドグレル/プラスグレル、そして抗凝固薬単独に移行するタイミングなどを確認し、適切な処方変更が行われているかどうかをチェックしましょう。
●出血リスクの伝え方
抗血栓薬(抗血小板薬、抗凝固薬)を服用する患者さんは、臨床上重大な出血を防ぐことが重要となります。そのため、薬剤師は服薬指導で出血リスクについて丁寧に説明する必要があります。また、このときに医療機関の受診が必要となる重大な出血と経過観察で様子を見てもよい出血を具体的に説明することがポイントになります(表1、2)。
| 出血部位 | 具体的な症状の説明例 |
|---|---|
| 頭蓋内出血 | 頭部の外傷、激しい頭痛や吐き気 など |
| 消化器系出血 | 吐血、血便、黒色の緩い便 など |
| 広範な皮下出血 | 全身の至るところに出血が起きる |
出血の場面や症状、程度は、患者さんにも伝わる言葉を選んできちんと理解しているかを確認しながら指導を進めましょう。また、出血が起きたときにどうすればよいのかは、次に取るべき行動がわかるように説明することが大切です。
| 出血部位 | 回避策や具体的な症状の説明例 |
|---|---|
| 鼻出血 | 鼻を強くかまない、繰り返す場合には耳鼻科受診 |
| 歯肉出血 | 軽い力で歯を磨く、柔らかい歯ブラシを使う |
| 限局した皮下出血 | 外傷を避ける、出血量は少ないので心配がないことを伝える |
| 痔からの出血 |
トイレットペーパーに付着する程度の出血なら心配ない
便秘を避ける、繰り返す場合には処置可能な医療機関を受診 |
| 血尿 | 赤い尿が続くときは泌尿器科を受診 |
このほか、閉経前の女性では、経血量の増加(過多月経)が起こることがあります。患者さんが不安にならないように、事前の服薬指導で経血量が増加しても重大な出血に至ることは稀で、服薬を継続することが重要であること、長く出血が続いて生活に支障が出るようであれば医師に相談することを伝えます。
虚血性心疾患に対するPCIや心房細動のカテーテルアブレーション治療は、短期入院で行われます。入院先で十分な服薬指導を受けられないまま退院となるケースも少なくありません。保険薬局における出血リスクなどのフォローアップが服薬継続につながります。
●カテーテル治療後の服薬継続
PCIは虚血性心疾患に対する有効な治療ですが、PCIで冠動脈が再開通したとしても、傷ついた血管内皮が健康な状態に戻るわけではありません。そのため、虚血性心疾患の既往がある患者さんには、常に再発リスクを抱えた状態であることを理解してもらうことが重要になります。患者さん自身が病態と服薬の必要性を結びつけられるように、疾患についても丁寧に説明しましょう。
血圧を管理して脳出血を予防する
抗血栓薬を服用中の患者さんは、血圧が上昇すると脳出血の発症リスクが高まります。患者さんに対しては、家庭血圧や体重測定などの記録をとること、受診時に記録を持参するように指導します。血圧は日内変動、季節変動もあるため、自分の血圧を継続的に測ることは、患者さん自身が自分の状態を把握することにもつながります。また、記録をもとに生活習慣の改善指導を受けたり、薬剤を調整したりすることで、血圧の安定をはかることが脳出血の予防につながります。
DOACの減量基準の確認と至適投与量の評価
PCI後や心房細動の脳梗塞予防などに使用される抗血栓薬は、原則的に生涯服薬を続ける必要があり、Do処方になりがちです。そのなかで注意が必要なのが抗凝固薬のDOACの減量基準です。
現在使われているDOACは2011~2014年に上市されたもので、当初から使用している患者さんは既に10年以上服用し続けていることになります。減量の基準は各薬剤で異なりますが、漫然とDo処方を続けていると過大用量となり、出血リスクが上昇してしまうことがあります。このため、DOACを与薬する際は患者さんが減量基準に該当していないか(減量基準は薬剤ごと異なることに注意!)を確認する必要があります。
逆に服用開始時は減量基準に該当していた患者さんでも、現在の状況では減量基準に該当しないというケースも考えられます。DOACのようにリスクとベネフィットの境界域が狭い薬剤の場合、基準に該当しない患者さんが減量することで薬剤の効果を最大限に得られないばかりか、過小用量による血栓リスクの上昇を招きます。定期的に年齢や腎機能の検査値を確認して適正用量となっているかを確認することが重要です。
●頓服薬に対する減量の考え方
DOACの減量が必要な薬剤が併用で処方された場合、常用であれば減量基準に従って処方を継続するのが原則です。ただし、併用する薬剤が頓服薬の場合(例:エドキサバン内服患者さんに対するベラパミルの頓用処方)、DOACを減量してしまうと、頓服薬を服用しなかった場合にDOACの十分な効果が得られず、血栓リスクの上昇を招きます。薬剤によって対応は異なりますが、頓服薬の場合には減量はせずに通常量での処方を継続するという前提で考えてよいでしょう。
服薬指導お役立ちコラム
患者さんの目線で考える:「いつまで薬を飲まないといけないの?」
服薬指導で患者さんに「この薬は続けて飲んでください」と説明しているにもかかわらず、患者さんから「この薬はもうやめてもよいですか?」「いつまで飲まないといけないのですか?」と聞かれた経験のある方が多いのではないでしょうか。
循環器疾患は再発予防や予後の改善を目的とした処方が多い領域です。これらの薬は、循環器疾患の薬物療法において非常に重要な位置づけにあるものの、患者さんにとっては効果を実感しにくいものです。とくに薬のことを「症状を改善したり、疾患を(根本から)治したりするためのもの」と認識している患者さんは、症状がないのに薬を飲み続けなければならないことが、腑に落ちないのかもしれません。
再発予防や予後の改善においては、現在の症状の有無と関係がないことは薬剤師にとって“常識”です。しかし患者さんも同じ認識で服薬指導を受けているとは限らないのです。そのため、薬剤師と患者さんでは薬に対する“認識が異なるかもしれない”という意識を持ちながら患者さんの薬識を確認していくことが大切です。このとき、患者さんの病態の説明を交えながら服薬指導を行うことで、症状の有無にかかわらず服薬が必要となる薬もあることが患者さんにも伝わりやすくなります。
<文献>
| ※1) |
厚生労働省:重篤副作用疾患対応マニュアル(医療関係者向け) 出血傾向.
https://www.pmda.go.jp/files/000245256.pdf (2026年7月10日閲覧) |
| ※2) | 循環器病薬剤師ネットワーク:こんなときどうする?薬剤師のための循環器ポケットブック,じほう,p.54,2026. |
<取材・監修>
芦川 直也 先生
医療法人 澄心会 豊橋ハートセンター 薬局長
1998年千葉大学大学院薬学研究科修了。県西部浜松医療センター(現:浜松医療センター)を経て2007年豊橋ハートセンターに入職。心不全療養指導士。循環器病薬剤師ネットワークを立ち上げ、薬剤師のスキルアップのための最新の知見の発信や教育等にも注力。同ネットワークメンバーによる共著に「薬剤師のための ここからはじめる循環器」(羊土社)、「こんなときどうする?薬剤師のための循環器ポケットブック」(じほう)がある。
この記事は2026年6月現在の情報となります。

